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偽島の呼び声?
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ラヴィニアの手記。

『イゴーロナクの手』


 
 


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夜の車道に勢いよく愛車を走らせ、私は考えを纏めていった。


二人組の正体は分かったものの……。
正直、打つ手が無かった。
相手はこの国の王室直属の諜報機関である。
後ろ盾があまりにも大きすぎた。

当時、私には後ろ盾らしい後ろ盾などいなかった。
『大いなる種族』や『ミ=ゴ』とはそれぞれ奇妙な出会いから友好的な関係を築いていたものの、困った時に気軽に助けを呼べるような間柄でもない。

逆に、ディオゲネス・クラブと英国内私立探偵たちは協力関係にある。
つまり、私たち容疑者である術士たちはブリチェスター住まいの私立探偵も敵にしたに等しい。
監視の目は今後更に厳しくなる―――。

私は自分の考えに愕然として思わず急ブレーキを踏んだ。

幸い、後続の車は無かったため、それ以上の何事も無かったが、私は脇へ車を寄せることも忘れ、呆然としていた。


そう、ディオゲネス・クラブは私立探偵と協力関係にある。
恐らく、町中の私立探偵が彼らに協力しているはずだ。


もし、私が既に監視されていたら?


私は強く舌打ちした。
自分の迂闊さに腹を立て、心中で散々毒づくが、何の解決にもならないことも充分理解しており、そのことが余計怒りを誘う。


クラウスと会ったことは軽率の極みと言えた。
もし、あの場を見られていたら、ましてや会話を聞かれでもしていたら。
私への疑いは間違いなく濃いものになるはずだ。

勿論、私はこの件に関しては無実だ。
だがディオゲネス・クラブは対邪神組織。邪神との接触を考え、アーティファクトを収集しその準備を着々と進める魔女の家を家宅捜索でもされたら最後、とことんまで私を追い詰めるだろう。

私の留守を狙って家捜ししようとするかもしれないが、私も魔女の端くれ、防犯対策は抜かりない。
だが、表向きはこの国で普通の生活を送っている以上、法を盾にされれば防ぎようが無い。裁判所の令状を持ってこられれば、嫌でも中に入れねばなるまい。


罠でもない罠に自ら嵌った自分の愚かさを呪いつつ、私は思考をフル回転させる。
最悪の事態を想定して……今後どうするべきか。

彼らを敵に回したくはないが、かと言って、逃げるという選択肢を選ぶつもりも無かった。


最も良い方法……。

最も良い方法は……。


いつまでそうしていたのだろうか。
後ろで激しくクラクションが鳴らされ、私は飛び跳ねた。


結局考えは纏まらず、後ろの車に急かされながら、家へと戻った。
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