偽島の呼び声?
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ラヴィニアの手記。
『イゴーロナクの手』
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その日、夜通し思案したあげく、朝を迎えた私が選んだ選択は『相手の次の行動を窺ってから考える』ということだった。
愚策ではある。
相手が打つ先手で勝負が決する恐れも充分に考えられる。
反撃もできずに一巻の終わり。
私の遠縁の魔女、かのキザイア=メイスンが使用していたという秘術を、私も既に習得していた。
それゆえ、いざ逮捕されるようなことになっても逃げる自信はあったが、そうであってもブリチェスターからは出て行かねばならないだろう。
逃げ回る生活など真っ平ごめんだった。
ゆえにこの勝負、絶対に勝たねばなるまい。
私が勝つには、『あの二人の捜査の目を他へ移らせ、私への興味を無くさせること』或いは『ディオゲネス・クラブ』の捜査そのものを中止させ、撤退させるという、二つの道が考えられる。
。
現実的なものは前者だ。
後者は『ディオゲネス・クラブ』が余程の想定外の事態にでも陥らない限り、まずあり得ない。
では、私から捜査の目を逸らすにはどうするか……。
それを考える間は私に与えられてはいなかった。
日が昇って間もなく、屋敷の呼び鈴が鳴らされた。
表向きは涼しい顔で出迎えたものの、内心、思い切り舌打ちしたい気分だった。
リチャードとスミスの二人が、にこやかに、そしてむっつりと立っていたのだ。
「ごきげんよう、メイスンさん。いい天気ですな」
リチャードが軽く手を振り、相も変わらず口元だけを器用に歪めた笑顔を向けてきた。
スミスはリチャードの半歩後ろから、何も言わずに私を睨むようにじっと見つめている。
「同感だ、お二方。今日は何の御用かな」
全く心当たりが無い、といった風に装い、二人に笑いかけてみせた。
そんな私の反応など想定の範囲内ということか、リチャードは楽しげな様子で言った。
「いやいや、ちょっと確認したいことがありまして」
「ほう?」
「お手間は取らせません。一つだけ質問に答えていただきたい」
右手の人差し指をピンと立てて見せ、私の了解を求める。
私はすぐに何を言わんとしているか理解した。
他に考えようが無い。
断るわけにもいかず、私はただ頷いた。
リチャードは柔和な、しかし鋭い眼光を私に突き刺しながら、『いえ、実は昨夜、酒場であなたを見かけた者がいましてね……』と、一枚の写真を差し出してきた。
そこには、クラウスと共にいる私が映っていた。
やはり、私には誰かの監視が付いていたことになる。
彼とは知り合いなんだ、とのらりくらりとかわしてみるものの、私は内心で何度舌打ちをしたか分からない。
このタイミングで警官と接触した以上、彼らの中で私への疑念は大きくなったことは間違いない。
真犯人が見つからない限り、私の周りを嗅ぎ回ることは必定だ。
彼らは『また来る』と言い残して立ち去った。
それを見送った後、私は後者を選ぶための手段を考えるため、部屋に篭ることとなった。
そう、ディオゲネス・クラブの調査そのものを中止させるための方法だ。
そのためには、彼らに『大失敗』をさせねばならない。
だが、そんな方法はそう簡単に見つかるはずが無い。
彼らはエリートだ。
そんな方法が、果たしてあるのかどうか……。
悩む私の視線の先に。
『力を貸そうか?』とでも言わぬげに、手を伸ばすものがあった。
そうだ、これだ。
私はそれを見てほくそ笑んだ。
これさえあれば、ディオゲネス・クラブを追い払うことができる。
それが極めて残忍で残酷な結果を齎すことを知っていた。
だが、私は魔女である。
それを使うことを、何らためらうことは無い。
善は急げ、である。
明日を決行日と定め、私は早々に眠りに就くことにした。
その日、夜通し思案したあげく、朝を迎えた私が選んだ選択は『相手の次の行動を窺ってから考える』ということだった。
愚策ではある。
相手が打つ先手で勝負が決する恐れも充分に考えられる。
反撃もできずに一巻の終わり。
私の遠縁の魔女、かのキザイア=メイスンが使用していたという秘術を、私も既に習得していた。
それゆえ、いざ逮捕されるようなことになっても逃げる自信はあったが、そうであってもブリチェスターからは出て行かねばならないだろう。
逃げ回る生活など真っ平ごめんだった。
ゆえにこの勝負、絶対に勝たねばなるまい。
私が勝つには、『あの二人の捜査の目を他へ移らせ、私への興味を無くさせること』或いは『ディオゲネス・クラブ』の捜査そのものを中止させ、撤退させるという、二つの道が考えられる。
。
現実的なものは前者だ。
後者は『ディオゲネス・クラブ』が余程の想定外の事態にでも陥らない限り、まずあり得ない。
では、私から捜査の目を逸らすにはどうするか……。
それを考える間は私に与えられてはいなかった。
日が昇って間もなく、屋敷の呼び鈴が鳴らされた。
表向きは涼しい顔で出迎えたものの、内心、思い切り舌打ちしたい気分だった。
リチャードとスミスの二人が、にこやかに、そしてむっつりと立っていたのだ。
「ごきげんよう、メイスンさん。いい天気ですな」
リチャードが軽く手を振り、相も変わらず口元だけを器用に歪めた笑顔を向けてきた。
スミスはリチャードの半歩後ろから、何も言わずに私を睨むようにじっと見つめている。
「同感だ、お二方。今日は何の御用かな」
全く心当たりが無い、といった風に装い、二人に笑いかけてみせた。
そんな私の反応など想定の範囲内ということか、リチャードは楽しげな様子で言った。
「いやいや、ちょっと確認したいことがありまして」
「ほう?」
「お手間は取らせません。一つだけ質問に答えていただきたい」
右手の人差し指をピンと立てて見せ、私の了解を求める。
私はすぐに何を言わんとしているか理解した。
他に考えようが無い。
断るわけにもいかず、私はただ頷いた。
リチャードは柔和な、しかし鋭い眼光を私に突き刺しながら、『いえ、実は昨夜、酒場であなたを見かけた者がいましてね……』と、一枚の写真を差し出してきた。
そこには、クラウスと共にいる私が映っていた。
やはり、私には誰かの監視が付いていたことになる。
彼とは知り合いなんだ、とのらりくらりとかわしてみるものの、私は内心で何度舌打ちをしたか分からない。
このタイミングで警官と接触した以上、彼らの中で私への疑念は大きくなったことは間違いない。
真犯人が見つからない限り、私の周りを嗅ぎ回ることは必定だ。
彼らは『また来る』と言い残して立ち去った。
それを見送った後、私は後者を選ぶための手段を考えるため、部屋に篭ることとなった。
そう、ディオゲネス・クラブの調査そのものを中止させるための方法だ。
そのためには、彼らに『大失敗』をさせねばならない。
だが、そんな方法はそう簡単に見つかるはずが無い。
彼らはエリートだ。
そんな方法が、果たしてあるのかどうか……。
悩む私の視線の先に。
『力を貸そうか?』とでも言わぬげに、手を伸ばすものがあった。
そうだ、これだ。
私はそれを見てほくそ笑んだ。
これさえあれば、ディオゲネス・クラブを追い払うことができる。
それが極めて残忍で残酷な結果を齎すことを知っていた。
だが、私は魔女である。
それを使うことを、何らためらうことは無い。
善は急げ、である。
明日を決行日と定め、私は早々に眠りに就くことにした。
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