偽島の呼び声?
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ラヴィニアの手記。
『イゴーロナクの手』
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目的の相手は、バーカウンターにもたれ掛かるようにして座り、グラスを煽るようにして勢いよく液体を体内に流し込んでいた。
まるで熊のような大男である。
椅子一つでは足りないとばかりに、でかい尻がはみ出していた。
「相変わらず、景気のいい飲みっぷりだな、クラウス」
私が背後から声をかけると、胡散臭そうな視線をこちらに向けたがすぐに酒で赤くなった顔をさらに紅潮させ、ニヤリと笑った。
「おやおや、ラヴィニアか。久しぶりだな。相変わらず美人だ」
まあ座れよ、と隣の椅子を引いて勧めてくる。私は遠慮なくそこに腰掛けた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだが」
私はすぐに本題に入った。
クラウスは苦笑したが、やれやれとばかりに何度も頷く。
「ああいいぜ。あんたが俺に声をかける理由なんて、決まってるからな……凡その検討はついてる。先日の人喰い事件を嗅ぎまわっている奴らのことだろ」
「……察しが良いな。その通りだ」
クラウスは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。それが店内でなく屋外ならば、地面に唾を吐きかけていただろう。
「連中、終わった事件について俺らからしつこく洗いざらい聞き出しやがった上に、捜査資料を丸ごともっていっちまいやがって、礼の一つも言いやしねえ。ムカつく奴らさ」
クラウス=ベイツ。ブリチェスター市警の刑事である。
公僕であるが、私を始め、マフィアなどに報酬と引き換えに情報を流す……つまり汚職警官である。
私も彼から警察内部の情報を何度か購入している。
「……なら話は早いな。あいつら、何者だ?
魔術士を犯人と見破ったということは、只者じゃないだろう。
私も容疑者の一人ということらしいが……」
クラウスはフフンと得意そうに鼻を鳴らした。
「流石のアンタも、名前くらいは聞いたことあるはずだ。
奴らは『ディオゲネス・クラブ』のエージェントさ」
その名に覚えがあった。
私の記憶に間違いがなければ、それは世に散らばる社交クラブのような生温い団体ではない。
英国王室直属特務機関。
腕利き揃いの対邪神組織だ。
MI5やMI6と違い、一般にはその名は知られていない。
だが、この国において『その道』に生きる者にとっては何より警戒するべき諜報組織である。
クラウスは声を殺して笑った。
「物騒な顔をしてるぜ。美人が台無しだ。ちびりそうだぜ」
だが、流石の私も冗談に付き合う余裕はもう無かった。
すぐに帰って対策を練る必要がある。
当時、何の後ろ盾もなかった私にとってはあまりにも強大な相手だったのだ。
私は折って丸めた札束をクラウスの前に投げやると、椅子から立ち上がった。
と、クラウスは私の腰に太い腕を回してきた。
「まあまあ、そう急がなくてもいいだろう。久しぶりに会ったんだしよ。金なんていらねえから、もう少し付き合えよ」
下心丸出しのニヤけた顔で誘うクラウスの顔が、次の瞬間痛みで歪んだ。
極短い悲鳴をあげて私の腰から手を離し、慌てて指先を押さえた。
私は困ったような、からかう様な顔を向けて首を振った。
「前に言ったはずだぞ、クラウス。相手をしてやってもいいが、私を抱けば明日の朝にはお前はミイラになっているってな。
この程度の痛みに耐えられないようでは、死ぬ覚悟なんて到底できまい。
ま、他を当たってくれ」
「チッ……この魔女め……!」
クラウスは毒づいたが、いつものことなので本当に怒っているわけではない。
さっさと私に背を向けると、バーテンに酒を頼んで再び飲酒に没頭し始めた。
私も彼に興味を失うと、素早く酒場を飛び出し、家路を急いだ。
目的の相手は、バーカウンターにもたれ掛かるようにして座り、グラスを煽るようにして勢いよく液体を体内に流し込んでいた。
まるで熊のような大男である。
椅子一つでは足りないとばかりに、でかい尻がはみ出していた。
「相変わらず、景気のいい飲みっぷりだな、クラウス」
私が背後から声をかけると、胡散臭そうな視線をこちらに向けたがすぐに酒で赤くなった顔をさらに紅潮させ、ニヤリと笑った。
「おやおや、ラヴィニアか。久しぶりだな。相変わらず美人だ」
まあ座れよ、と隣の椅子を引いて勧めてくる。私は遠慮なくそこに腰掛けた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだが」
私はすぐに本題に入った。
クラウスは苦笑したが、やれやれとばかりに何度も頷く。
「ああいいぜ。あんたが俺に声をかける理由なんて、決まってるからな……凡その検討はついてる。先日の人喰い事件を嗅ぎまわっている奴らのことだろ」
「……察しが良いな。その通りだ」
クラウスは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。それが店内でなく屋外ならば、地面に唾を吐きかけていただろう。
「連中、終わった事件について俺らからしつこく洗いざらい聞き出しやがった上に、捜査資料を丸ごともっていっちまいやがって、礼の一つも言いやしねえ。ムカつく奴らさ」
クラウス=ベイツ。ブリチェスター市警の刑事である。
公僕であるが、私を始め、マフィアなどに報酬と引き換えに情報を流す……つまり汚職警官である。
私も彼から警察内部の情報を何度か購入している。
「……なら話は早いな。あいつら、何者だ?
魔術士を犯人と見破ったということは、只者じゃないだろう。
私も容疑者の一人ということらしいが……」
クラウスはフフンと得意そうに鼻を鳴らした。
「流石のアンタも、名前くらいは聞いたことあるはずだ。
奴らは『ディオゲネス・クラブ』のエージェントさ」
その名に覚えがあった。
私の記憶に間違いがなければ、それは世に散らばる社交クラブのような生温い団体ではない。
英国王室直属特務機関。
腕利き揃いの対邪神組織だ。
MI5やMI6と違い、一般にはその名は知られていない。
だが、この国において『その道』に生きる者にとっては何より警戒するべき諜報組織である。
クラウスは声を殺して笑った。
「物騒な顔をしてるぜ。美人が台無しだ。ちびりそうだぜ」
だが、流石の私も冗談に付き合う余裕はもう無かった。
すぐに帰って対策を練る必要がある。
当時、何の後ろ盾もなかった私にとってはあまりにも強大な相手だったのだ。
私は折って丸めた札束をクラウスの前に投げやると、椅子から立ち上がった。
と、クラウスは私の腰に太い腕を回してきた。
「まあまあ、そう急がなくてもいいだろう。久しぶりに会ったんだしよ。金なんていらねえから、もう少し付き合えよ」
下心丸出しのニヤけた顔で誘うクラウスの顔が、次の瞬間痛みで歪んだ。
極短い悲鳴をあげて私の腰から手を離し、慌てて指先を押さえた。
私は困ったような、からかう様な顔を向けて首を振った。
「前に言ったはずだぞ、クラウス。相手をしてやってもいいが、私を抱けば明日の朝にはお前はミイラになっているってな。
この程度の痛みに耐えられないようでは、死ぬ覚悟なんて到底できまい。
ま、他を当たってくれ」
「チッ……この魔女め……!」
クラウスは毒づいたが、いつものことなので本当に怒っているわけではない。
さっさと私に背を向けると、バーテンに酒を頼んで再び飲酒に没頭し始めた。
私も彼に興味を失うと、素早く酒場を飛び出し、家路を急いだ。
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