偽島の呼び声?
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ラヴィニアの手記。
『イゴーロナクの手』
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その家は至って平凡な家で、40前くらい歳であろう、夫婦が済んでいた。
突然の見知らぬ客の来訪に驚いた夫婦であったが、私が礼儀正しく名乗ると警戒を解き、家の中に招き入れてくれた。
少し雑談を交わした後、私は本題を切り出した。
「実は、あなたの家の前を通った時に妙な物を見かけまして……」
主人はすぐに何のことか察したらしく、苦笑いを浮かべて頭を掻いた。
「あれですか。あれは私の死んだ父が遺したものなんですよ。
私の父は何と言うか、グロテスクというかオカルティックというか、そういうものが大好きでしてね。
エジプトだったか、北アフリカへ旅行に出かけた時にどこかの露天で買ったんだそうですよ。
私はあんなものに興味はないし、妻も子供も気味悪がるし、手放したいんですが、そこそこの値段だったそうですからただ捨てるっていうのも勿体無くてね。
かと言って、古物商に鑑定してもらったら全く価値のないものだって言われてしまうし。騙されたんでしょうなあ。
しょうがないんで、人目の付きにくい所に放置している状態なんですよ」
私はすぐに、しめたと思った。
彼も、そして彼の父もこれを売りつけた露天商も鑑定した古物商も、これの持つ真の価値を知らない者だったに違いない。
かと言って、私もこれの価値を知っていたわけではない。
勘だ。
私の勘が、これを『とんでもなく貴重なもの』だと囁いているのだ。
「実は私もこういった品を集めるのが好きでして。
あの彫刻が気に入ってしまいました。
良ければ私にお譲りくださいませんか?」
夫婦は目を丸くして顔を見合わせ、『物好きな人だ』とでも言いたげな顔で私を見つめていたが、すぐに承諾してくれた。
私が100ドル紙幣3枚を差し出すと、大喜びで彫刻を紙で包み、持たせてくれた。
間違いなく掘り出し物であると確信していた私は、大急ぎでブリチェスターに戻り、書棚をひっくり返してこの彫刻の正体を探し求めた。
まさに寝食を惜しんで、というやつである。
一週間近く、ろくに食べずろくに寝ず、書物を読み耽った。
そして遂にその記述を発見するに至った。
無名祭祀書や魔術の真理、そしてグラーキ黙示録の12巻においてその正体に関する内容が見られたのだ。
幸いにして、私はグラーキ黙示録の中の、最も危険な個所に目を通すことが無かった。
運が良かったといえよう。
もし、その個所に目を通していたら、ひょっとすれば『彼』がやってきていたかもしれない。
イゴーロナク。
『旧支配者』と呼ばれるグレート・オールド・ワンの一柱。
悪意に満ちた邪神。
この彫刻は、彼の『手』である。
恐るべき呪いの神器だ。
かつてはロシア皇帝の寝所で、教皇代理の執務室で、売春宿の一角で、世界のあらゆる場所で目撃され、そして姿を消したという品である。
私は小躍りした。
とんでもないものを手に入れた、と!
私は注意深く書を読み、この使用方法を学んだ。
学ぶにつれ、『使ってみたい』という欲望が胸の中で徐々に膨らみ、渦巻くのを感じた。
しかしながら、私は魔女といえど、表向きは法を遵守した一般市民を装っていた。
世間との折り合いをつけておかねば、表立った行動がしにくいからである。
魔女としての顔は、人間が征服できたと勘違いしている闇の時間に表に出せばいいのだから。
そうなると、ただ闇雲に一般人にこの呪いの神器を使用するわけにはいかない。
私が魔女、とまでは言わないにしろ、重度のオカルトマニアのように近所中に思われていることは疑いのないところだ。
何か事件が起これば、ここブリチェスター内に怪しげな人物が多いとは言っても、容疑をかけられる一人になることは間違いない。
どうしたものか、と思案する……そんな時間はあまり要らなかった。
すぐに、絶好の機会が向こうからやってきてくれたからである。
その家は至って平凡な家で、40前くらい歳であろう、夫婦が済んでいた。
突然の見知らぬ客の来訪に驚いた夫婦であったが、私が礼儀正しく名乗ると警戒を解き、家の中に招き入れてくれた。
少し雑談を交わした後、私は本題を切り出した。
「実は、あなたの家の前を通った時に妙な物を見かけまして……」
主人はすぐに何のことか察したらしく、苦笑いを浮かべて頭を掻いた。
「あれですか。あれは私の死んだ父が遺したものなんですよ。
私の父は何と言うか、グロテスクというかオカルティックというか、そういうものが大好きでしてね。
エジプトだったか、北アフリカへ旅行に出かけた時にどこかの露天で買ったんだそうですよ。
私はあんなものに興味はないし、妻も子供も気味悪がるし、手放したいんですが、そこそこの値段だったそうですからただ捨てるっていうのも勿体無くてね。
かと言って、古物商に鑑定してもらったら全く価値のないものだって言われてしまうし。騙されたんでしょうなあ。
しょうがないんで、人目の付きにくい所に放置している状態なんですよ」
私はすぐに、しめたと思った。
彼も、そして彼の父もこれを売りつけた露天商も鑑定した古物商も、これの持つ真の価値を知らない者だったに違いない。
かと言って、私もこれの価値を知っていたわけではない。
勘だ。
私の勘が、これを『とんでもなく貴重なもの』だと囁いているのだ。
「実は私もこういった品を集めるのが好きでして。
あの彫刻が気に入ってしまいました。
良ければ私にお譲りくださいませんか?」
夫婦は目を丸くして顔を見合わせ、『物好きな人だ』とでも言いたげな顔で私を見つめていたが、すぐに承諾してくれた。
私が100ドル紙幣3枚を差し出すと、大喜びで彫刻を紙で包み、持たせてくれた。
間違いなく掘り出し物であると確信していた私は、大急ぎでブリチェスターに戻り、書棚をひっくり返してこの彫刻の正体を探し求めた。
まさに寝食を惜しんで、というやつである。
一週間近く、ろくに食べずろくに寝ず、書物を読み耽った。
そして遂にその記述を発見するに至った。
無名祭祀書や魔術の真理、そしてグラーキ黙示録の12巻においてその正体に関する内容が見られたのだ。
幸いにして、私はグラーキ黙示録の中の、最も危険な個所に目を通すことが無かった。
運が良かったといえよう。
もし、その個所に目を通していたら、ひょっとすれば『彼』がやってきていたかもしれない。
イゴーロナク。
『旧支配者』と呼ばれるグレート・オールド・ワンの一柱。
悪意に満ちた邪神。
この彫刻は、彼の『手』である。
恐るべき呪いの神器だ。
かつてはロシア皇帝の寝所で、教皇代理の執務室で、売春宿の一角で、世界のあらゆる場所で目撃され、そして姿を消したという品である。
私は小躍りした。
とんでもないものを手に入れた、と!
私は注意深く書を読み、この使用方法を学んだ。
学ぶにつれ、『使ってみたい』という欲望が胸の中で徐々に膨らみ、渦巻くのを感じた。
しかしながら、私は魔女といえど、表向きは法を遵守した一般市民を装っていた。
世間との折り合いをつけておかねば、表立った行動がしにくいからである。
魔女としての顔は、人間が征服できたと勘違いしている闇の時間に表に出せばいいのだから。
そうなると、ただ闇雲に一般人にこの呪いの神器を使用するわけにはいかない。
私が魔女、とまでは言わないにしろ、重度のオカルトマニアのように近所中に思われていることは疑いのないところだ。
何か事件が起これば、ここブリチェスター内に怪しげな人物が多いとは言っても、容疑をかけられる一人になることは間違いない。
どうしたものか、と思案する……そんな時間はあまり要らなかった。
すぐに、絶好の機会が向こうからやってきてくれたからである。
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